こんにちは。ETUSUSの多賀です。
2022年6月、石川県能登半島の先端、珠洲で最大震度6弱を観測する地震がありました。
地震の活動期に入ったと言われる日本。比較的地震が少ないと言われる北陸でも決して安心はできません。
これから家を建てようとお考えの方も、あらためて「地震に強い家にしたい!」と思ったことではないでしょうか。
「うちは耐震等級2だから心配ない」と思っている方。実は建物だけ強くしても地震に耐えられるとは限らないのです。建物の建つ「地盤」、この地盤が地震に強いかどうかを調査し、しっかりと対策をたてることが「地震に強い家」にするための必須項目です。
この記事では、万が一の大地震で倒壊しない家づくりのベースとなる「地盤」にフォーカスし、地盤から考える耐震設計について解説します。是非最後までご覧ください。
今回は次の3つのテーマに沿ってお話しします。
1.地盤調査・改良と地耐力
2.地震の横揺れに強い地盤とは?
3.地盤から考える耐震設計とは?
<1>地盤調査・改良と地耐力
「地盤が地震に強いかどうかを調査する」と聞くと、これから家を建てようと色々勉強されている方なら「地盤調査」を思い浮かべるのではないでしょうか。
地盤調査とは、建物を建てる前に地盤の性質を把握し、その地盤がどれくらいの重さに耐えられるかを表す「地耐力」を調べるものです。地耐力は数値が大きいほど、抵抗力のある固い地盤であることを表します。
これから家を建てる敷地が地耐力の低い軟弱な地盤だった場合、そのまま建物を建てるといずれ沈下してしまいます。「地盤沈下」や「不動沈下」と言われるものです。これが起こると、床の傾きやドア、窓が開かないなど、暮らしに直接影響する被害をもたらします。
建物を沈下させないために、地盤調査で軟弱な地盤だと判明した場合は、「地盤改良」という対策を行ないます。
代表的なものに「表層改良」と「柱状改良」があります。
〇表層改良
軟弱地盤が地面から2メートル程度の場合に用いられる工法。弱い部分の土を掘り返し、セメント系材料と混ぜ合わせ押し固めることで補強します。
〇柱状改良
軟弱地盤が地面から2~8メートル程度の場合に用いられる工法。弱い部分の土を柱状に掘り返し、土とセメント系材料を混ぜ合わせたコンクリートや砕石の柱を強い地盤まで届くようにつくり補強します。
これらの改良を行ない地耐力を高めることで、沈下が起こらない地盤をつくります。
地盤調査は現在義務となっており、家を建てる前に必ず行われる調査です。
でも実は、この調査では地震に強い地盤かは分かりません。「地耐力が高い≠地震に強い地盤」なのです。
そして地盤改良もあくまでも建物の重みによる沈下対策であって、地震の横揺れに耐えるようにする対策ではないのです。ガーン。
<2>地震の横揺れに強い地盤とは?
では、地震の横揺れに強い地盤かどうかはどうすれば分かるのでしょうか。
それは「微動探査」を行なうことで分かります。微動探査とは、測定したい敷地の地面に箱状の高性能な地震計を置き、人が感じない細かな地盤の揺れを測ることで、その地盤特有の揺れやすさを探るものです。
先程の地盤調査から分かるのは、地盤の地耐力であり、建物の重さに耐えられるかどうかなので、全くの別物です。
揺れやすさは「地盤増幅率」で表されます。ランクがAからEまであり、Cを中間として、A・Bが揺れにくい地盤、D・Eが揺れやすい地盤となります。
私達が生活する地表は、火山活動や地殻変動の影響を受けたり、雨風に削られた土砂が堆積したりしながら、永い時間をかけて形成されてきたものです。そのため地盤は形成された時代や構成する地質・地層により、地震時の揺れやすさや想定される災害が異なります。
下の図は地質による揺れやすさの違いを、分かりやすく図に表したものです。山地など古くからある地盤は揺れにくく、上に堆積してできた地盤ほど揺れやすい特徴があります。また近年、宅地造成などのために埋め立てたり、盛土した場所は特に揺れやすい地盤となります。このような地盤増幅率2.0以上となるような場所では、震度6強の揺れが震度7相当にまで増幅されてしまいます。
実際に、地盤の揺れやすさの違いが地震時の住宅被害に大きな違いをもたらした事例があります。
それは2016年の熊本地震です。震度7の激しい揺れに2度襲われた熊本県上益城郡益城町。
わずか数10メートル離れたエリアで住宅の被害が大きく異なるという現象が見られました。多くの住宅が倒壊した地区のすぐそばで、ほとんどの住宅が残っている場所があったのです。被害が集中した地区では、これまでにない激しい揺れが観測されていました。なぜある地区だけが強烈な揺れに見舞われたのでしょうか。
原因はまさに住宅の建っている場所の地盤の揺れやすさの違いでした。揺れやすい地盤に建っていた住宅は被害が大きくなる傾向が見られました。
この事例の驚くべきところは、地盤によって住宅の被害が増幅されたということだけではなく、わずか数10メートル離れるだけで、地盤の揺れやすさが全く変わってくるということです。
これから家を建てる敷地は地震に強いのか弱いのか。地形やこれまでの用途などである程度予測はつきますが、実際のところは測定してみないと分かりません。微動探査を行ない、地盤の揺れやすさを知ることがリスク回避のために最も有効です。
<3>地盤から考える耐震設計とは?
さて微動探査の結果、自宅の建設予定地が揺れやすい地盤だと判定結果が出てしまった・・・Σ(゚д゚lll)ガーン。
大丈夫です!事前に揺れやすい地盤であることが分かっていれば、適切な対策をたてることができます。
対策としては、地震に耐える壁「耐力壁」の量を増やすこと、制震装置を設置することなどが挙げられます。
ちなみに地盤自体を改良して揺れにくくすることは現在の技術では不可能です。地面の下奥深くから改良することになってしまうので現実的ではありません。つまり建物側でしか対策のしようがないということです。
しかし耐力壁を増やすと、コストがあがり開放感のない暮らしにくい家になってしまいます。
できるだけコストを抑えて、揺れやすい地盤に地震に強い家を建てるにはどうしたら良いのか。
お勧めしたいのが、住宅の倒壊シミュレーションができる「wallstat」を用いて軸組の検討を行なうことです。Wallstatでは、微動探査で判明した地盤の揺れやすさの影響を加味して、木造住宅の大地震時の損傷状況や倒壊過程を建物全体でシミュレーションすることができます。
このシミュレーションを行なうことで、建物の弱点が分かるのでピンポイントで必要な対策をたてることができます。必要な箇所に必要なだけの耐力壁や制震装置を設置することができるので、過剰なコストアップにはなりません。
さてここで、このブログのタイトル「固い地盤に建てる家は地震に強い?」に戻ります。
もうお分かりですね。答えは「No」です。地盤が固いことだけでは、地震に強い家にはなりません。地盤の揺れやすさに見合った対策を施した家が「地震に強い家」となります。
<まとめ>
地盤の固さや、建物の重さで建物が沈むことがないかを調査するのが「地盤調査」。地盤の揺れやすさや地震にあった際、その敷地に建つ建物が揺れやすいかどうかを調査するのが「微動探査」。つまり地震に強い建物を建てるためには、微動探査を行ない、地盤の揺れやすさを明確にした上で、適切な対策をたてることが重要です。
地盤の揺れやすさを反映して対策をたてるためには、wallstatで地震時の揺れを再現するのが効果的です。過剰にコストをかけずに、地震に強い家を実現することができます。
ETUSUSでは、全棟微動探査を行ない地盤の揺れやすさを測定しています。また設計段階からバランスよく地震に強い構造にこだわって設計を行ない、耐震等級3が標準となっています。北陸など多雪エリアでの耐震等級3は間取りの自由度が下がってしまいがちですが、考え抜かれた間取り・構造が規格住宅の強みです。
万が一の大地震でも、大切な家族の命と財産を守ってくれる家を自信を持ってお勧めします。これから家づくりを始められる方、是非一度ご検討ください。