今回は、新築の「建て方別」でのコスト比較を解説していきます。
このテーマは、いま最も多くの方が悩むポイントのひとつです。
「平屋は人気だけど、やっぱり高いのかな?」「2階建てはコスパがいいけど、光熱費やメンテナンスは?」
そんな疑問に答えるために、本稿では建築費用・光熱費・維持費という3つの観点から、建て方別の特徴を徹底的に比較・分析していきます。
それでは、早速当コラムの結論から見ていきましょう。
・同じ床面積の家を建てたとすると、建築費用だけ見れば「2階建て<1.5階建て<平屋」の順番に高くなる
・等級6を超える高断熱かつ気密性が一定以上になっていれば、建て方による光熱費の差は出にくい
・平屋や1.5階は、エアコンの能力を有効活用しやすい間取りにしやすい側面がある
・平屋は外壁・屋根面積が増えるため、外装メンテナンス費用がやや高くなるが、高耐久の素材を活用するなどの対策で負担を軽減できる
・大地震の際には、高さが低い方が地震で受ける物理的なダメージは少ないですが、平屋でも耐震等級3は確保しましょう
<1>建築費用の比較

建築費用の差を生む最大の要因は「構造躯体の面積比率」です。
平屋はワンフロアで完結するため、基礎面積と屋根面積が広くなります。
住宅のコスト構成を分解すると、基礎工事と屋根工事は全体の約3割にもなる場合があり、全体の費用を左右するポイントです。
同じ30坪の家でも、2階建てなら15坪+15坪で基礎・屋根は15坪分で済むわけです。
しかし平屋の場合、30坪分すべてに基礎と屋根が必要となり、資材量と職人手間が約1.5〜1.7倍に増える計算となり、平屋は割高になりやすくなります。
<1-1>1.5階建ての位置づけ

1.5階建てとは、寝室が1階に配置され、生活の中心が1階にある家のことを指します。
1.5階建ては、「寝室・LDK・水まわり」をすべて1階にまとめ、2階には子ども部屋や書斎など最小限の空間を配置するスタイルです。
生活の重心を1階に置き、平屋のような使い方と建物全体の高さ・面積を最適化しやすい構成で、最近急激に人気が高まっている建て方です。
基礎・屋根面積は平屋よりもコンパクトになり、建築コストを感覚的には平屋に比べて約1〜2割程度抑えられるのが大きなメリットです。
構造的にも、2階部分が軽量で小規模なため、耐震性は確保しやすいですが、耐力のバランスなどをしっかり確認する必要があります。
「将来は1階だけで生活を完結できる安心感がほしいけれど、平屋の建築費は難しい」という層にとって、非常に合理的な選択肢と言えます。
<1-2>コスパを最重視するなら2階建て

2階建ては、同じ延床面積で最もコストを抑えやすい建て方です。
理由はシンプルで、基礎と屋根の面積が最も小さいため、材料費が少なく済むからです。
また、敷地がコンパクトでも採光・通風を確保しやすく、土地の面積を抑えやすく、土地・建物の総額を抑えやすい点が魅力です。
ただし、例えば鉄骨階段や大きな吹抜けを設計すると、階段・構造躯体そのもののコストがアップしてくるため、2階建てすべてがコスパがよい、というわけでもなく設計次第です。
<2>光熱費の比較

最近の新築は全体的に断熱性・省エネ性のレベルが向上しています。
住宅の光熱費(暖冷房費)に最も影響するのは、「断熱性能(UA値)」と「気密性能(C値)」です。
現代の高性能住宅(断熱等性能等級6〜7、C値1.0以下)では、建て方による年間エネルギー消費量の差は数%程度にとどまります。
「平屋だから暑い」「2階建ては冷える」といったイメージ・先入観を持たれている方もいるかもしれませんが、それは住宅性能が低かった時代の話です。
現在は断熱・サッシ性能・空調換気設計が飛躍的に進化しており、建て方の違いよりも設計精度が光熱費を左右する時代になっています。
<2-1>平屋や1.5階はエアコンの能力を発揮しやすい

出典:【富山市婦中町麦島】回遊動線とたっぷり収納で暮らしを快適にする平屋の家
平屋は上下の温度ムラが元々少なく、空調を効かせやすい構成です。
ただし屋根面積が大きい分、昔は夏季の屋根放射熱がそのまま室内に入り込んでいたため、平屋は夏に暑いと言われていましたが、屋根断熱の強化や通気層構造をしっかり取れば、2階建てと変わらない快適性になります。
一方、1.5階建ても、生活空間がほぼ1階に集約されているため、冷暖房効率が非常に良いのが特徴です。
2階部分が小さいため、上下の温度差が生まれにくく、エアコン1〜2台で全体を快適に保てるケースもあります。
また、リビングやホールに吹抜けを部分的に設けて上下の空気を循環させるなど、パッシブデザイン(自然の力を利用した設計)を取り入れやすいのも利点です。
<2-2>平屋や1.5階建ては太陽光発電の設置に有利

平屋・1.5階建ては屋根設計次第では、南向きに屋根面積を多く確保できるため太陽光発電システムの設置に有利です。
2階建ては相対的に屋根面積が小さくなり、搭載できる容量に限界があり、屋根設計を見直すか最大容量を決めるケースも少なくありません。
北陸でも冬季以外は、しっかりとした発電が見込まれるため、ZEH / GX ZEHを前提とした家づくりであれば、1.5階建てや平屋の方が、太陽光発電の搭載量を上げやすい傾向にあります。
<3>維持費の比較
今回の比較で取り上げる維持費は、メンテナンス費と将来的な大地震による“隠れた大幅出費リスク”の2つです。
<3-1>外まわりのメンテナンスコスト差

一般的に、外壁や屋根の再塗装・防水工事は10〜15年ごとに必要とされており、ライフプランに落とし込んだ将来の費用計画が重要です。
平屋は外壁・屋根の面積が広いため、総額では2階建てより1〜2割ほど高くなる傾向があります。
また、平屋は屋根面積が大きい分、雨樋や軒天といった防水メンテナンス範囲も増えやすいでしょう。
一方、平屋や1.5階建ては足場が低く安全性が高いことから、工事単価が下がるというメリットもあり、最終的な費用差はそれほど大きくは開かないでしょう。
1.5階建ては外壁・屋根のボリュームが抑えられるため、メンテナンスコストは平屋より安く、2階建てとほぼ同程度に収まるケースが多いです。
以上から、メンテナンスの費用を左右するのは建て方よりも「素材選び」と言えます。
外壁や屋根をガルバリウム鋼板などの高耐久素材にしておけば、メンテナンス周期を長く保つことができ、長期的にはコストを抑えることが可能です。
<3-2>地震で受けるダメージは平屋の方が有利。でも…

地震で受ける横(水平)方向の力に対しては、建物の高さが低いほど有利です。
平屋や1.5階建ては重心が低く、地震時の水平加速度(慣性力)が小さく抑えられるため、2階建てに比べて物理的にも倒壊・損傷リスクを抑えることができます。
ただし、平屋・1.5階建てであれば大丈夫、というわけではありません。
平屋は建物が横に広がる分、耐力壁の配置バランスを誤ると、ねじれ剛性に弱点が出やすい点には注意が必要です。
また1.5階建ては上部重量が軽いものの、構造的にアンバランスになりやすい側面があるため、平屋・1.5階建てであっても構造計算(許容応力度計算を含む)による耐震等級3の確保をしましょう。
まとめ

平屋は「将来まで1階で完結できる安心感」が最大の魅力です。
確かに建築にかかる総費用は、もっとも割高になるものの、家族の将来設計や家の使い方を合理的に考えることで、面積を必要最低限にして総額を抑えることもできます。
一方、1.5階建ては「子育て期〜老後」まで柔軟に対応でき、ライフステージ対応力が高いのが特徴です。
昨今、エツサスでも1.5階建てに注目される方が増えてきており、設計・施工とも増えており1.5階建てのプランも拡充させています。
平屋・1.5階・2階建ての3つの選択は、土地・家族の事情・価値観などで左右され、必ずしも「正解」はありません。
ご家族に合った建て方から、しっかり考えていきたい方はぜひエツサスでお気軽にご相談ください。
