「住まいは幸せの器~住む人の幸せを心から願う~」
(ゲスト)
代表取締役 水元 一暁(みずもと かずあき)さん ※以下 水元
会社設立 平成9年4月 有限会社 水元工務店
平成24年7月 株式会社 水元工務店 HPはこちら
(聞き手)
エツサスアーキテクチャー協会 代表理事 原野 剛行 ※以下 原野
【水元工務店について】
原野:本日は、水元工務店さんの家づくりに対する想い、今後目指されるビジョンなどを中心にお伺いしたいと思っています。まず、水元工務店さんの会社紹介および水元社長の自己紹介をお願いできますでしょうか。
水元:社員数は現在20名で来春に新卒が4名入社する予定です。昭和8年(1933年)に祖父が水元建具店を創業しまして、その後父が後を継ぎ法人化しました。平成9年(1997年)4月に水元工務店に社名変更し会社を設立しましたので、住宅会社としては24年になります。私が代表になってから携わった解体現場に祖父が作った建具が入っていまして、そのお客様に大切に使われていて「この建具は良いですよ」って言われた時は、おじいちゃん凄いなぁって思いましたね。
私は大学を卒業してゼネコンの現場監督になりました。建築を一生の仕事にしようと思ったのは現場監督時代の27歳か28歳の頃です。その時担当していた店舗併用住宅のお客様は大病を抱えておられました。実は完成後しばらくしてその方は亡くなられるんですが、家族に良い家を残したいという想いで家づくりがスタートしました。当時私はただ現場監督として仕事をしていただけなんですけど、引渡しの時に「水元くん、本当に良い家を残すことができた」と私の手を握られたんです。もう涙が止まらなかったですね。それがこの業界に骨を埋めようと決心した瞬間です。その後独立して経営的に苦しい時期もありましたが私を支えてくれたのはあの時のお客様の言葉ですね。
私は今58歳で会社を設立してから24年間 経営者として仕事をさせていただいていますが、現場監督出身ですから営業というよりは現場や設計が好きなんですよね。いわゆる技術屋さんです。家をつくることが大好きで、良い家をつくりたいという一心で24年間やってきました。今でも年間150プランほど描いています。お客様のご要望を聞かせていただくと白い紙にプランが浮かび上がってくるんですよ。
【家づくりに対する想い】
原野:会社のトップが家づくりが大好きで、設計や技術にこだわりをもっているというのはとても大事ですよね。それでは水元工務店さんの家づくりへの想いや商品に対するこだわり、特徴などを具体的に教えてください。
水元:住まいは「幸せの器」です。なので、住む人の幸せを心から願える人でなければ住まいづくりに携わってはいけないと思っています。これが大前提です!そして、商品コンセプトは「365日帰りたくなる家」です。例えば2、3日旅行に行って家に帰るとホッとしますよね。お客様には家に帰った時のそのホッとする感覚を毎日感じてもらいたいと思っていて、「お客様ごとの帰りたくなる理由」を設計スタッフ全員で考えています。私も出張から帰って家で妻の顔をみるのが一番ホッとします(笑)
基本性能としてはまずは快適性が必要です。快適性とは夏涼しくて冬暖かい家ということですね。エアコン1台で家全体が快適になって且つ電気代が安いというのは大きなメリットですよね。そして安全性。つまり地震に強いということですね。次に動線。お客様それぞれで生活スタイルが違いますのでその人にあった一番暮らしやすい動線を考えます。
原野:住宅の基本性能である断熱性・耐震性は当たり前に高いレベルを確保し、さらにお客様ごとに暮らしやすい動線を設計されるのですね。お客様の想いや生活スタイルをヒアリングするのに相当な時間が掛かるのではないでしょうか。
水元:まずはご夫婦オーダーシートという小冊子に自分たちの生活スタイルや要望、こだわりを書いていただきます。また現在住んでいる家の良い所、悪い所なども書いていただきます。そして設計担当者2名と私の計3名で設計コンペを行い、一番いいプランをベースに詳細を詰めて行くというやり方をしています。
【お客様との信頼関係】
原野:お客様にとって家を建てることは一生に一度の大きなプロジェクトだと思いますが、お客様との関係づくりで大切にされていることはありますか?
水元:「環境整備」という取り組みを行っています。これは私の会社の最も自信のあるところでして、パートの女性も経理や事務の担当者も全社員が全ての現場に行き、チェックシートを使ってお客様の目線に立って安全性や整理整頓、職人さんの礼儀などを評価します。そして写真を何枚も撮って社内のLINEグループで共有します。これを全現場、週に3回のペースで行っています。これをすることで職人さんの意識も上がりますし、現場の改善がどんどん進んでいきます。お客様とも現場の進捗状況を写真で見える化して共有しています。
原野:全社員で取り組んでおられるのが凄いですね。
水元:他には地鎮祭をはじめとして、上棟時の掛矢式(かけやしき)、手形式、お引き渡し式も行っています。お引き渡し式の時には、最後にメモリアルDVDと感謝状をお渡します。これは本当に喜ばれます。なかには涙を流される方もいらっしゃいます!かれこれ10年以上続けていますね。
原野:10年も継続されているのは凄いですね。お客様にとって思い出に残る感動のセレモニーがあるからこそ、お引き渡し後も良い関係を長く続けていけるのでしょうね。
水元:水元工務店はお客様の家の主治医として一生お付き合いさせていただきたいと思っているんですね。医師と建築士は同じだと思っています。ですからお引き渡しをした後も私たちは本気でお客様に寄り添っていきます。
【エツサスについて】
原野:エツサスに加盟しようと思われたきっかけや理由を教えていただけますか?
水元:まずはウッドリンクさんの住宅に対する価値観と水元工務店の価値観が合致していたということですね。プレカット会社で構造計算を行っている点や、プレウォール工法を開発されているところにとても共感していまして、一緒に家づくりを行いたい業者さんの一社であるというのが前提としてあります。現在の水元工務店はプレウォール工法を標準採用していますし、エツサスのお話しをいただいたときには基本性能やデザイン、規格住宅の考え方等をお聞きして間違いないと思い即決しました。おそらく9社の中で一番早く参加の意思表明をしたのではないかと思います。
原野:そのように思っていただけて本当にありがたいです。私たちウッドリンクとしてもかねてから同じ価値観の工務店様とのパートナーシップで家づくりを行いたいという想いがありました。今回の9社のメンバーにおいては本当に地域を代表する有力な工務店様に参画していただいたと思っています。水元工務店さんにとって福井県でエツサスを販売する意義を教えていただけますか。
水元:世界経済が年々成長している一方で、日本経済は長い間低迷を続けています。ウッドショックやメタルショックをはじめとして、あらゆる資材が高騰していて本来であれば誰もが手に入れられるはずの住宅を「買いたくても買えない」方が出てくるのではないかと危惧しています。一からプランニングする注文住宅ではなく規格住宅にすることによって、性能やデザインを妥協することなく、誰もがリーズナブルな価格で買えるようにするというのは工務店の使命だと思います。
そして、加盟店9社協同で最高の規格住宅を開発して販売していくというところにも魅力を感じています。このモデルハウスも31坪で23帖のLDKは凄いですよね。お客様が最初に言われるのは「広いですね!本当に規格住宅ですか?」って。このような魅力のある規格住宅をより多くの方に知っていただき、家づくりの選択肢の一つとして考えていただければと思っています。
原野:エツサス事業で私が一番心配しているのはお客様が規格プランに対して窓の位置を変更したいとか、壁を無くしたいといった要望がどれだけあるのだろうかということです。実際、間取りを変えられないという事に対するお客様の反応はいかがでしょうか?
水元:全国的な住宅需要を見るとマンションやアパート、戸建て分譲といった出来上がった住宅を選ぶというニーズの方が実は多いんですよね。出来上がった住宅に対して、お客様が自分の暮らしにフィットするかどうかという視点で選ぶということになれば、それが実は一番失敗しない家づくりなんですね。
原野:なるほど。図面上ではなくてモデルハウスで実際の空間や間取りを体験して選ぶわけですからある意味一番失敗しない家づくりになるのですね。
水元:今後はお客様のニーズとして和室や平屋といった要望も出てくると思いますのでエツサスとしては新しい商品をどんどん展開していきたいですよね。
原野:そうですね。時代の変化やお客様のニーズに合わせて新しいプランをどんどん追加していきたいと考えています。次に、会社経営において大切にされている価値観や考え方を教えて下さい。
水元:会社って一つの理念に集まった組織集団で、その組織の中で一人ひとりが個性を発揮するものだと考えています。また、企業の一番の使命は存続だと思っていまして、黒字経営を続けなければならないというのが根本の考え方としてあります。そして会社の規模をただ大きくするのではなく、小さくても強い会社をつくりたいと考えています。そのためには社員への教育、人財育成が大切であると考えています。教育というのはその人の価値を高めることだと思っていまして、社員には能力開発のために研修として必ず東京や大阪まで行ってもらっています。泊りの3日間コースなんかに参加すると帰ってきたら意識がガラッと変わっていますね。やはり社員一人ひとりの夢を実現する場が会社だと思います。
実は社員を大切にするという考え方に変わったのは妻のお陰なんです。経営的にいろいろ悩んでいるときに妻がいろんな助言をくれて自分の考え方が変わってきました。ある時、お客様にお断りされたケースがありました。何度も図面を描き直して、じっくり時間をかけていたので、私はその方に対してネガティブな感情を抱いてしまっていたんですが、その時 妻が「私たちがお客様をどう思うかじゃなく、お客様が水元工務店をどう思うかが大切なんじゃない?」って言ったんですよね。私たちを選んでくれたお客様が水元工務店を良く言うのは当たり前ですけど、私たちを選んでくれなかったお客様からも良く言われるような会社にならないとって。だから、そんな気づきをくれたお客様に逆にこちらがお礼しなければいけないって言われました。たとえ、水元工務店で家を建てていただけなくても、お客様が本当に良い家づくりができるよう心から願う。ご縁をいただいた人全てを幸せにすることこそが、家づくりに携わっている私たちにとってのあるべき姿だって気づいた瞬間でした。それからは全てのお客様に100%尽くすことはもちろん、社員に対しても100%尽くそうと思うようになりました。
原野:素晴らしい奥様ですね。自社を選ばなかったお客様にも良いイメージをもってもらうということは本当に大切ですよね。そしてご縁をいただいた全ての方を幸せにする、だから社員に対しても幸せになってもらうように100%尽くす、本当に素晴らしい考え方だと思います。最後に水元工務店様の10年後のビジョンを教えて下さい。
【ビジョン 10年後の水元工務店について】
水元:定量的な目標としては5年後に売上高25億円、経常利益1億5千万円、10年後には売上高50億、経常利益3億円です。従業員は100名ぐらいになっていると思います。その頃には現在の経営幹部がしっかりと会社を切り盛りしていて、私は68歳なので妻と毎日ジムに通いながら、登山なんかしていると思います(笑)
原野:今日はいろんなお話しが聞けて、改めて水元社長の家づくりに対する想いは素晴らしいなぁと思いました。また、そのような社長の元で働ける社員の方が幸せだなぁと思いますし、学べる環境も与えられて本当に良い会社だと思います。お客様もそのような素晴らしい会社と家づくりができれば本当に幸せでしょうね。本日は貴重なお話しありがとうございました。