昨今、色々な住宅会社に話を聞きに行くと、「高気密」「高断熱」なんていうフレーズを聞くことが多いのではないでしょうか?
昔の家に比べれば、どこの会社もこのあたりの性能が上がっていますが、実は性能の「適正値」まで考えている会社は少ないです。
この記事では、特に北陸エリアにおいて、高気密・高断熱の「適正なレベル」を考察していきます。
少し難しい内容でもありますが、家づくりにおいて参考になる内容になっていますので、最後まで少し集中してご覧になってみてください。
・断熱性能は高めれば高めるほど効果はあるものの、一定のレベルを超えるとその差はかなり分かりにくくなってくる
・標準仕様でも、断熱性能を上げるためには建築コストが掛かっているため、適正な断熱性能でないと過剰になっている可能性も・断熱性能だけ上げて、気密性能を考えた設計になっていないと、効果が半減する。
・北陸エリアは地域区分では5〜6地域が多く、断熱等級6前後が効果とコストのバランスが良い
<1> 断熱性能を上げることによる効果
断熱性能は、いわば家の保温性と言い換えることができます。
昔の家に比べて、冷暖房の効きが良くなって温熱環境が快適になりやすいこと、そしてエアコンなどを必要以上に使わなくてもよいため光熱費の削減にも役立ちます。
ただし何事にも「やり過ぎは禁物」、物事には目的に応じた適正なレベルが存在します。
高い断熱性能の効果も、一定のレベルを超えるとその差はかなり分かりにくくなってくるという事実をご存知ですか?
<1-1>断熱のレベル分けは7段階に分けられるが・・・
高断熱で得られる効果は、申し上げた通り「快適性」と「光熱費の削減」の2つです。
住宅の断熱のレベルは、国の基準では7段階に分かれています。
下から順番に、数字が高いほど断熱性能が高くなる「断熱等級」として設定されており、現在国が定めている基準は等級4(7つのうち上から4番目)です。
そして、その1つ上の等級5がZEH(ゼッチ)レベルとなっており、現在の新築ではこのZEH基準辺りを標準としている会社が増えてきました。
ZEHレベルとされる等級5は、2030年に法律で義務化される予定になっていますが、その上の等級6〜7は義務化される予定は現状ありません。
このように7つのグレードがあると、最上位のグレードにしたくなる気持ちも分かりますが、「北陸エリアにおける適正値」を知っておくと良いです。
(ここでの話はあくまで北陸エリアを想定した話で、北海道などの地域と同じではありません)
わかりやすいように自動車に例えるなら、日常的に買い物に行くだけにも関わらず、スポーツカーまで必要?というように、目的と性能はマッチしていないといけません。
<1-2> ZEHを超えてくると効果が分かりにくくなる
出典:経済産業省・ZEH調査報告書2022・一部編集
家の性能も、快適であったり光熱費を圧縮するという目的から考えた時、超高断熱の性能同士で比較するとその差は僅かとなります。
昔の家と比べれば、上から3番目のレベルであるZEHの家ですら非常に快適です。
そう言える理由は、国土交通省が実施したZEHを建てた人に対する公式アンケート(上図)から読み取れます。
断熱性能がよくなるごとに、家の快適性に対する満足度が上がっています。
しかし、最高グレードである断熱等級7と等級6の差はまさに僅かと言えます。
北海道に新築するのであれば、北陸と同じ断熱性能ではいけませんが、その地域の気候を冷静に考えることと、その効果および建築費用とのバランスを考える方が賢明と言えるでしょう。
断熱等級も7つまであると、「最高ランク」にしたくなる気持ちもわかりますが、家は断熱だけでなくデザインや耐久性と言った様々な要素にお金をかけないといけません。
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<2>建築コストが掛かっていることを忘れてはいけない
このように、断熱性能を上げるためには必ずコストがかかってきます。
ここで知っておいてほしいポイントは、「標準仕様」という言葉です。
いくら標準仕様でも、断熱性能を上げるためには建築コストが掛かっているため、適正な断熱性能でないと過剰になっている可能性も考えられます。
断熱性能ごとの快適性、効果、建築コストのバランスを考えて提案してくれる会社を選ぶことが大事と言えます。
<3>気密性能も同時に考えないと高断熱の効果が半減
出典:日本住環境株式会社
断熱をこだわる上で知っておいてほしいポイントは、断熱性能だけでは片手落ちで、気密性能も合わせて考えた設計になっていないと効果が半減することです。
保温性の高い水筒でも、フタが開いていたら効果が薄れるのと同様、気密性能も高めないと本当の断熱性能の効果は発揮されません。
また、換気における性能も気密性が悪いと本来の換気ができず、むしろ家や人体に悪影響が出かねません。
しかし、断熱性能をPRをしている会社は昨今多くなってきたものの、気密性能まで全棟で高くしている会社はかなり少ないです。
<3-1>気密性能は現場の施工精度が数字で出てしまう
断熱性能は机上の計算で建築前に性能値を出すことができます。
一方、気密性能は建築した現場で実測して算出するため、同じような性能でも算出方法が大きく異なります。
同じ間取りであっても、大工さんの腕などによって大きく左右されます。
<4>北陸エリアは雪は多いが寒冷地とは言い切れない
富山の立山・白川郷に近いエリアや、石川県の白山の山間部などを除き、北陸の主要地域は地域区分では5〜6地域が多いです。
答えから申し上げると、北陸の主要地域では断熱等級6前後が効果・コストのバランスが良いとされています。
北陸は冬に雪が多いエリアのため、積雪に対する備えは必要ではあるものの、東北地方や北海道のような寒冷地ではないため、最上級の断熱性能までなくても十分な効果を発揮します。
ただし、現在の国の基準である等級4程度では、冬に肌寒さを感じたりするため最低でもZEH基準である断熱等級5程度は必要です。
さらに光熱費の削減や、体感としての効果を考えていくと、ZEHレベルよりもう1段階高い「断熱等級6」がおすすめになります。
北陸では、むしろ積雪による荷重での耐震性に気を付けなくてはいけません。
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まとめ
このように断熱性能は闇雲に上げればいいものではなく、地域の気候および効果も考えて設定することが大事です。
エツサスでは、北陸の気候を考えて家の性能を設定しています。
性能値も闇雲ではなく、建築コストのバランスが最適なラインを見極めて、「意味のある性能値」でみなさんにご提示しています。
気になった方は、ぜひお近くのモデルハウスに見学予約をしてみてください。