今回は、北陸地方に焦点をあてて、新築における「最適な」断熱のレベルはどれぐらいか?を探っていきます。
断熱等級は実に7段階の設定があり、確かにもっとも断熱性能がいい等級7が優れているとは言え、建築費用・効果といった側面、さらには断熱の目的や北陸地方の特性も考えて、ぶっちゃけどこがいいの?を解説します。
家づくりを始めて、断熱や省エネの話を色々なところで聞いて、よくわからなくなっている方もぜひ参考にしてください。
それでは、今回のコラムの要点から見ていきましょう。
・結論:北陸地方では断熱等級6と等級7の間ぐらいがちょうどいい
・注意ポイント① 北陸は雪は多いものの、北海道・東北のような寒冷地でもないため、断熱の “やりすぎ” に注意
・注意ポイント② 北陸は特に冬季期間、日射が大幅に減るため、通常の断熱基準をそのまま適用していると、想定通りの効果が発揮できない可能性がある
・断熱は家全体の「保温性」をキープしやすくする目的があるのと同時に、光熱費の削減効果もありますが、実は設備機器をグレードアップする方が光熱費削減効果は大きい
・北陸地方では、GX志向型住宅を達成させることは意外と難しく、性能に詳しい会社でないと打合せ後に後悔につながる可能性が高い
<1>北陸における最適な断熱等級は6.5

北陸(石川・富山・福井・新潟)では、断熱の基準を決めるための地域区分上、3地域~6地域となっており、主要エリアでは5地域か6地域です。
数字が小さいエリアほど寒さが厳しいエリアとなりますが、北陸エリアではおおむね下記のような分類になっています。
北陸4県の県庁所在地では5地域~6地域になっていますが、このエリアの気候の諸条件を考えると、おすすめの断熱性能は「断熱等級6と7の間ぐらい」が「ちょうどいいレベル」となります。
今回のコラムでは、北陸で断熱等級6.5が「ちょうどいい理由」を深堀していきます。
<2> 断熱の「やりすぎ」は費用対効果が悪化

北陸は冬季において雪が多い特徴がありますが、北海道・東北のような寒冷地でもありません。
時に寒い日もありますが、北陸4県の県庁所在地付近では、最高気温が0度を下回るといったことはありません。
断熱等級が7段階あると、最高等級の7段階目にしたくなる気持ちもわかりますが、高断熱にしていくとコストもかかってきます。
SNSなどで高気密高断熱がしきりにPRされていますが、そのエリアの気候特性 × 得られる効果 × 家づくりにおける費用、この3つの要素をうまく組み合わせないと「単なる自己満足」になってしまいます。
これらのバランスを総合的に考えると、北陸の主要エリアは断熱の “やりすぎ” には注意が必要なエリアです。
<2-1>高断熱の目的と効果

断熱性を上げることで、“ 家の保温性 ” がアップしますが、この目的は家のどこにいても温度が快適で、健康な暮らしができることです。
北陸地方の気候であれば、断熱等級6 → 等級7への「効果の差」を感じることは少し難しくなってきます。

ZEH調査委員会出典・エツサス加工
実際に6地域でZEH水準以上の家に住んでいる方へのアンケート(国土交通省・ZEH調査報告書より)では、等級7を超える性能にしても等級6~7の満足度とほぼ同じ結果になっています。
エツサスでは、断熱等級6~7を標準仕様としていますが、冬季における室内の温度をエアコン1台で、WHO「住宅と健康に関するガイドライン」で定められている冬季の奨励室温18℃をキープできるような設計になっています。
<3>北陸の断熱は「不足しがち」

出典:LIXIL
断熱等級の基準となっている数値は、代表地点の気候をもとに設定されています。
等級6であれば東京、等級5であれば宇都宮となってますが、本来は断熱等級の「基準自体」から地域ごとに「補正」して設計することが望ましいです。
アメダスなどの気象データをもとに客観的に判断されているものの、気温がベースとなっている考え方となっており、日射(日差しの量)などは考慮されていません。
東京や宇都宮といった基準エリアと、北陸地方の大きな違いは「冬季の日射量」です。
北陸は特に冬季期間に日射量が大幅に減るため、通常の断熱基準をそのまま適用していると、冬に想定通りの効果が発揮できない可能性があります。
上図はLIXILのプレスリリースからの抜粋ですが、ここでは同じ6地域でも冬季に日射がしっかり確保できる静岡県浜松市と、そうでない石川県金沢市では必要とされる断熱性能を変えないといけないという指摘をしています。
HEAT20の考え方では、最低室温をキープするために必要な断熱性能として規定しているため、昼間の日射量が不足するエリアでは地域性に合わせて断熱性を調整することを推奨しています。
<4> 最適な断熱性は省エネ性の観点からも考えるべき
つづいて、高断熱における効果は「冷暖房費を抑えること」や「室温の快適性」があげられますが、省エネ性という側面も同時に考えないといけません。
かんたんに言い換えると、いくら高断熱であっても使っているエアコンや給湯器が、効率が悪い機種だとエコじゃない、ということです。
<4-1>光熱費全体を抑えるには設備機器との組み合わせも大事

断熱は家全体の「保温性」をキープしやすくする目的があるのと同時に、光熱費の削減効果もあります。
しかし、実際に電気・ガスを使うのはエアコンや給湯器などであり、この住宅に付随する設備機器の性能も同時に考えないといけません。
また、断熱と同じで各設備機器も、省エネ性が高い機器は機器本体が高額になりがちです。
ただし、光熱費(電気代・ガス代)を抑えることを目的とするなら、北陸エリアの気候であれば、実は設備機器をグレードアップする方が光熱費削減効果は大きくなることが多いです。
もちろん一定以上の断熱性能が確保されていることを前提条件とする場合ですが、高断熱から “超”高断熱にすることによる費用アップでの光熱費削減効果は微々たるもの。
ここは、間取りによっても大きく変わってきますので、コストパフォーマンスを最大化した設計が気になる方は、エツサスでぜひ話を聞いてみてください。
<4-2>GX志向型住宅の「落とし穴」に注意

子育てグリーン化住宅支援事業という2025年の補助金制度で注目を集める「GX志向型住宅」という住宅があります。
要は、ZEH水準から1段階グレードアップした住宅を指しますが、北陸地方ではGX志向型住宅を達成させることは意外と難しいのです。
断熱性能はクリアできるにしても、省エネ性に関する基準クリアが少しハードルが高く、住宅の性能に詳しい会社でないと調整に手間を取る可能性が高いでしょう。
打合せ後に「このプランでは達成できない」「設備機器をもっとグレードアップしないと達成できない」と言われるケースも今後発生してくる予想がされており、「こんなはずじゃなかった」という後悔につながる可能性が高いと予想しています。
まとめ

エツサスでは「北陸の気候風土に最適な高性能住宅」を掲げてきました。
今回、ご紹介したような北陸地方に適した断熱性能、またせっかくお金を払って建築する新築でもありますので、意味のあるモノにお金を払いたいですよね。
エツサスでは、このように高性能住宅の意味や効果を徹底的に考えた規格プランが人気になっていますが、今回ご紹介した「GX志向型住宅」に適合する仕様もご用意しています。
ぜひ、今回のコラムの内容が気になった方、補助金を活用したい方、コストパフォーマンスが高い住宅を選びたい方は、お近くのエツサスのモデルハウスにお越しください。
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